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JGNインタビューvol.005

【NICT総合テストベッドユーザの事例紹介】『介護現場の2大課題を解決するモデルシステム構築を目指して』

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  2.   超高齢化社会に備え、介護現場の課題を解決するモデルは『地域包括ケア』に応用可能
     ― そんな大容量のIoTデータの蓄積・解析には、NICT総合テストベッドは使いやすい! ―

───親の介護のことなども考えると、今後本当に必要とされるモデルだなと思います。

吉田:そうですね。実はこの総務省のIoTサービス創出事業に公募する以前から「超高齢者社会にどう対応していくか」ということで『地域包括ケア*1』について東京大学の高齢社会総合研究機構にいらっしゃる井堀幹夫先生と研究*2をしており、これがベースになって今回のプロジェクトにつながりました。日本人口の1/3が65歳以上の高齢者になるという『2030年問題』が目前になり、介護施設や病院はパンク状態で希望するケアを受けることが難しくなってきます。病院で死ぬという選択もできなくなるかもしれません。そこで今、行政が中心になって地域内で介護が必要な高齢者を家族だけでなく、地域の医療機関・介護事業者が状況に応じてサポートする『地域包括ケア』をやろうとしています。

───なるほど、超高齢化社会への対応としての『地域包括ケア』ですか?

吉田:実際に自宅で介護するとき、センサーを使ってケアセンターなどにデータを集約すれば医療機関や介護事業者のサポートがしやすく安心だと思います。そのために、まずは今回のプロジェクトで介護施設でセンサーを使ったモデルの実証実験を考えたわけで、健康状況や排泄や睡眠のデータからサポート方法がある程度パターン化できると思います。弊社の仕事は解析がメインですから、センサーデータや介護日誌をいろいろな形で解析し、特異点を明確にしていく予定です。

───人間が生きている限り、運動・健診、排泄、食事、睡眠というのは全部必要なデータですね。

吉田:これらは介護に限ったことではなく、健康な人にとっても必要なデータであることは確かです。ただ、データ形式がベンダーごとに異なっているので、マルチベンダーによるシステム間連携ができる標準化が必要になってくるでしょうね。さまざまなIoTデータを共通様式に統合・加工し、介護システムに自動で登録する仕組みについては、我々もまだ試行錯誤しているところです。

───標準化はなかなか簡単ではありませんね。データを串刺しにして名寄せするのも大変でしょう。

吉田:やはり難しいです、ベンダーの思いは全く別々ですから。一番下位にあるセンサーデータもそうですが、介護システム自体もやはり全く異なっているんです。これは他の業界でも全く同じだと思いますが・・・。また、データは個人情報ですから、本当に外部に接続して蓄積したり分析していいかどうかということも問題になります。今回のプロジェクトでデータを取るにあたり、かなり個人情報のハードルが高くて、施設利用者のみなさんに誓約書というか一筆書いていただく必要がありました。ビッグデータとして解析するには個人が特定できないようにしないといけませんし、名寄せして介護日誌に反映させるには個人が誰なのか特定できないと記録としては残せないし、保険点数も請求できないわけです。各介護施設の中だけでは個人情報を活用して名寄せするけれど、データの分析には個人情報を特定できないみたいなレベル分けの仕組みが必要です。

───確かにレベル分けの仕組みと同時に、収集したIoTデータを何にどう使うのかについて許可をいただく書類が必要ですね。

吉田:今回のプロジェクトでは収集するのは健康データだけですが、『地域包括ケア』では自宅介護になるとその人の遺言管理や財産、生活保護の状況、宗教などのかなり個人的な情報も全部管理するものに含まれてきますから、かなり情報漏洩などの危険が高くなりセキュリティ的な強度が必要になります。ですから、情報ごとにアクセスできる人をシステム的にレベル分けして絞るだけでは不十分で、道徳的なことや法律的なこともいろいろと考えておく必要があります。そのためにはスタッフ個人個人の教育や研修も大事で、必須となりますね。

───最終的にデータが漏洩する大きな原因は、人ですものね。

吉田:おっしゃる通り、人の問題も大きいです。特に介護では、日本人だけではなく海外スタッフも多くなっていて、完全に文化が違っていますから教育や研修もなかなか大変です。これは介護の現場だけでなくコンビニなども同じで、こういう単純な労働環境では日本人だけを集めて運営していくのはなかなか難しい状況になっています。

───海外からの医療・介護系スタッフは、日本で現場の技術を学んで自国で役立てたいと考える教育レベルも志も高い方が多いと聞いていますが・・・。

吉田:そうなんですよ、まさしくそういう感じ。ただ介護士より医療系の医師や看護師の方が多いかもしれませんが・・・。互いの文化が違いますから研修や教育が重要ですし、彼らも楽に業務に専念できる介護システムも必要なんですね。

───このプロジェクトで目指している「質の高い介護サービスモデル」「介護スタッフの負担が軽減する業務モデル」は、介護施設という閉じた現場から『地域包括ケア』に広がるわけですね。

吉田:はい、もっと広がると思いますね。そして、我々のプロジェクトチームがもともと目指すところは『地域包括ケア』ですから、広げていきたいです。やはり施設内の閉じた世界だけでなく、我々の日常的なところでIoTデータをきちんと取っていくことは大切だと思います。

───すべてのものがネットワークにつながるのが、IoTですからね。ところで、今収集しているIoTデータをどのように解析して活用していこうとされているのでしょうか?

【図2-1】睡眠見守りサービスのイメージ
【図2-1】睡眠見守りサービスのイメージ
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【図2-2】睡眠見守りサービスの実証内容
【図2-2】睡眠見守りサービスの実証内容
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吉田:試行錯誤の状態ですが、いろいろグルーピングして解析していければと考えています。解析するときのキーとして、センサーで収集したIoTデータを地域や年齢、性別、教育水準などでグループ分けすると、いろいろなパターンが出てそれぞれ特徴が明確になると思うんですよね。やることは山ほどあり、ただ全部総当たりしてみていくのは難しいので、仮説を立てて、それに応じて調整しています。ただデータによっては被検者がそれほど多くないので、全データのいろいろなグルーピングは難しいのですが・・・。まずは仮説をたてるため、50~100人程度のデータを取ってもらい、見える化というかビジュアル化をしてみて、いろいろなパターンで組み合わせて解析をしています(【図2-3】を参照)。

【図2-3】R解析のサンプルイメージ
【図2-3】R解析のサンプルイメージ
(右下は睡眠時間と離床回数の関連マップ)
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───この解析にNICT総合テストベッドを使っていただいていると思いますが、クラウドのサーバにIoTデータを全部まとめた上で解析を行っていらっしゃるのですか?

吉田:本来はあのサーバにデータをガンと入れて、解析をするのにCPUパワーをフルに活用する予定でしたが、まだデータ量がそれほど多くありませんので・・・。実際試してみると、NICT総合テストベッドのCPUを使うと弊社内のサーバで2か月ぐらいかかる解析処理が10秒程度でできそうですので、そういう能力を期待して使わせていただいています。こういうIoTデータを処理しようとした時に、元データが多くなればなるほど時間がかかりますし、さらに精度を高く解析しようとすると普通のサーバでは無理で、やはりNICT総合テストベッドのように大規模で高性能なCPUはニーズが高いと思いますね。

───NICT総合テストベッドのサーバを使うメリットは、データ解析の処理能力の高さ。確かに大容量のIoTデータを多様な角度から高精度に解析するときには、使い勝手が良さそうですね。

吉田:そうです。井堀先生とやらせていただいている柏プロジェクトは『地域包括ケア』の1つですが、これを全国規模に広げてNICT総合テストベッドで分析してみると、柏市と北海道の町では全く特徴が違うことが明確になると思います。医療・介護分野は弊社の仕事のone of themですが、他にもNICTさんとの事業もありそうですので、公募などでまた使わせていただきたいと思います。

───今回のプロジェクトだけでなく、NICT総合テストベッドをいろいろな形でご利用いただけると嬉しいです。
また、これからまとめに入るこのプロジェクトの成果についても期待しております。 今日はありがとうございました。。

        <2018.1/株式会社ジーウェイブ本社においてインタビュー>



【総合テストベッドに関するお問合せはこちら】
  tb-info@jgn-x.jp


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*1:「地域包括ケア」
厚生労働省においては、2025年(平成37年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進している。

*2:参照/井堀幹夫先生の研究
「地域連携における新たな社会システムづくりをめざして」
 (総務省資料)



(株)ジーウェイブの打合せコーナーでのインタビュー風景
(株)ジーウェイブの打合せコーナーでのインタビュー風景


  • 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
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