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Network Testbed JGN-X

JGN-Xインタビューvol.004

イメージ新世代ネットワーク推進フォーラム
テストベッドネットワーク推進ワーキンググループ
井上友二 主査
<(株)トヨタIT開発センター 代表取締役会長>

テストベッドネットワーク推進WG・
井上主査にお聞きする
『JGN-X利活用、これからの方向』

-テストベッドネットワーク推進WGの目的とJGN-X-

第4回のJGN-Xインタビューは、新世代ネットワーク実現のために連携して活動を行っている「新世代ネットワーク推進フォーラム」において、テストベッドネットワーク推進ワーキンググループ主査を務めていただいている井上さんに、
 ●当ワーキンググループの目的
 ●JGN-X利活用の動向
 ●今後の方向性
などについて、お話を伺いたいと思います。


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1. テストベッドネットワーク推進WGの究極の目的
― 利用者から、文句や意見がたくさん出てくるようになることが重要 ―

───新世代ネットワークのお話から、お伺いしたいのですが・・・。

井上:まず、ICT分野における日本の現状をお話ししますが、今、日本ではこの分野を牽引していくリーダーがいないです。これが、日本の弱点です。国内という小さなコップの中でリーダーなしで企業同士で争っていますから、世界の中ではICT関連の競争力が弱く、部材以外はほとんどダメになりつつあります。しかも強いはずの部材は産業規模がかなり低いため、いくら世界シェアが高くとも、これだけでは日本はやっていけないので、システムやサービスなど、日本が世界の中で同等にやっていける新規分野が必要となります。
それが、NWGN(NeW Generation Network)=新世代のネットワークです。この新規分野で日本が頑張るためには、非常に進化の速いICT分野のスピードに対応して研究開発を行い、実用化することが大事ですから、これを牽引するリーダーが必要なんです。一昔前、僕がNTTの研究所にいた頃には、公的立場の電電公社がリーダーとなって技術開発を行い、民間はそれに協調して世界で競争していましたが、今やNTTは熾烈な国内競争のまっただ中にいる民間企業であり、利害を超えた国家的なプロジェクトを牽引する立場は弱くなっています。

───だから、ICTの新規分野である新世代ネットワークの技術開発は、NICTが中心になって進めるべきということですか?

井上:そうなんです。一企業がリーダーになるのは無理ですから、ICT、特に新世代ネットワークでは、NICT(独立行政法人情報通信研究機構)が中心となり、旗を振るべきだと考えています。だからこそ、新世代ネットワーク推進フォーラムが設立されていますし、その中のテストベッドネットワーク推進ワーキンググループ(以下、WG)の主査として、テストベッドネットワーク「JGN-X」に協力し、実証実験の推進や利用促進などを進めてきています。【新世代ネットワーク推進フォーラムのホームページ及び図1-1参照】
研究が主目的の大学と違い、NICTは研究開発に加え、新世代ネットワークの技術や商品の実用化を目指す必要があります。しかし研究開発と実用化の間には大きなギャップがあり、すぐ市場に出せるわけではありません。まずはJGN-X上で多くの方に使っていただく。そして、そこでたくさん批判や問題点の指摘を受ける。次に、JGN-Xでそれを解決しながら、ユーザと協力してレベルアップする。実用化・事業化までには、このようなスムーズなトランジットを進めていくことが必要なんです。

───研究開発から実用化への移行には大きなギャップがあるとのことですが、JGN-Xでこの移行を進めるため、重要となるポイントはなんですか?

井上:重要なポイントは多くのユーザに使っていただいて、批判や問題点の指摘、つまり“文句”をたくさんいただくことです。僕がいたNTTの研究所は、事業部から文句を言われるのが一つの仕事でした(笑)。逆説的に考えると、文句を言われるということは、研究レベルから市場で使い物になるかどうか判断するレベルになってきたということです。市場に出せるレベルにも至っていないときは興味も示されず、文句も言われない。だから文句が出ない状態というのは、まだダメなんです。しかし、JGN-Xの現状を見ると、誰も文句を言わない。つまり、まだ実用化に向けてのレベルに至っていないんです。
だから、僕が考えるWGの究極の目的は、ユーザから「こんなものは使いにくい」「この技術はこう使えないと困る、何とかしてくれ」という意見がWGの場に次々に出てくること。これがJGN-Xの求められる姿で、そうなってこそ、このテストベッドが本物になると考えています。

───なるほど。JGN-Xに対していろいろ文句が出てくるくらい、ユーザ利用を促進し、実用化につなげるのがWGの究極の目的ですね。

井上:はい、そのとき、文句を言ってくれるユーザの中に国外の仲間がいるというのが大事で、特にアジアや新興国のユーザと手を結ぶことが必要と考えています。ICTのうち携帯とそのネットワークを例に取ると、10年ほど前までは先進国中心で4億台。このときは日本のiモードが断トツ優位で、日本の携帯メーカーはすごい勢いでした。しかし、この10年で新興国に携帯が普及した結果、携帯のグローバルマーケットは60億台を超え、10倍以上になりました。この新興国マーケットに対し、日本のメーカーは出遅れた感があります。

───これから成長が見込める新興国マーケットが大事なんですね。しかし、成功している海外のメーカーと日本とでは、何が違うのでしょう?

井上:携帯の中味に差はありません。携帯のネットワーク技術が難しいのも同じ。でもこの携帯ネットワークでのグローバルマーケットを握ったのは今をときめくAppleやサムスンではなく、ノキア、エリクソン、アルカテル・ルーセントなど昔から強いネットワークベンダー企業が中心で、現在これらを含む上位ベンダー企業で世界の携帯基地局から内側のネットワークを80%握っています。ちなみに日本企業のマーケットは小さいですが、この差は、ネットワーク技術の売り方の違いにあります。たとえば東南アジアの通信事業者Aの場合は、モバイルのユーザ数が1億人以上で日本のドコモより多いのですが、LTEなどの新技術がわかるエンジニアは微々たるもの。ではここの技術はだれが担当しているかというと、上位ベンダー企業の1社なんです。ネットワーク設計から設備導入、建設、それらのメンテナンスなど、ネットワーク・オペレーション全部をやるとともにプランニングもこのベンダー企業ががやっており、通信事業者Aに対しても、新サービスや端末をこの時期にこの値段で投入したらこうなるというプランを全部コンサルティングしています。通信事業者Aは携帯事業の免許を持っていますが、ネットワーク運用はベンダー企業が代行しており、このベンダー企業のノウハウで容易に新興国でも携帯やインターネットが普及し、これによりベンダー企業の収益にもつながるんです。

───現地の技術レベルに合わせて、至れりつくせりですね!

井上:これが新興国マーケットの実情です。日本のメーカーは端末などものづくりが中心で、ネットワーク運用やコンサルティングの提案は行わない。ネットワークの技術革新に対応した新しい端末などを売るだけですから、新興国マーケットでは次のプロポーザルになかなかつながらないのです。これに対して先ほどの上位ベンダー企業は、それぞれが抑えている新興国マーケットニーズに合わせてプランニングをし、オペレーションもOEM(Original Equipment Manufacturer)でやっていますから、次につながっていく。これが、グローバルマーケットが大きく拡大する理由ですね。

───ベンダー企業がアフリカで展開している携帯電話は、通話以外に金融的なサービスが現地マーケットのニーズにあっていたから普及したとか・・・。

井上:そうです。その金融的なサービス自体は、そのベンダー企業の手持ちのサービスで、アフリカ用に特別に開発したものではないんです。サービスの初期導入は開発費がかかり高くなりますが、既に先進国ではあちこちのマーケットに導入し、開発費が回収できているので、それを新興国に導入するときは安く売れるわけですよね。しかも、そのベンダー企業が主導して計画的にマーケットをを拡大していけるので、サービスを導入するのに必要な機材や携帯端末の製造ラインもロスなく組むことができるんです。ですから、携帯電話に限らず、ネットワークのグローバルマーケットを握るというのは、非常に大きなメリットがありますね。

───新興国のニーズにあったサービスも、マーケット拡大に重要ですね。

井上:はい。WGでは新世代のネットワークの研究開発と実用化のギャップを埋めるために頑張っていますが、重要なのは、日本人のマインドだけで研究開発をしてはダメだということなんです。先進国だけをターゲットにしていると携帯電話のときと同じようにマーケットが小さくなってしますから、グローバルマーケットを握るためには、新興国ユーザと手を組み、そのマインドを知って研究開発に活かすべきだとお話ししたんです。先進国マーケットと違い、技術者も少なくネットワーク環境もバラバラな新興国マーケットでは、現地の要望を聞きながら、忍耐強くやる必要があります。ですから、早い時期にアジアなどのユーザを入れて、技術開発もするしアプリケーション開発もするというのが良いのではないでしょうか?
先ほどもお話しましたが、WGでは日本だけでなく新興国ユーザから、「これでは使いものにならん」「もっとここを強化してくれ」という意見が出てくることを目指したいです。

───新興国ユーザも巻き込んで、より多くの方にJGN-Xを使っていただくのなら、WGは国際会議のように英語がメインになりますね(笑)。

井上:それもいいと思いますよ。海外との連携には、APAN(Asia-Pacific Advanced Network Consortium)のアクティビティなどいろいろあり、研究者同士の情報共有はありますが、実際のシステム連携はまだ。そこを早くやりたいですね。
研究者というのは、自分の研究分野での学術的な競争がありますから、研究者同士の集まりだけの状態だとシステム連携をつくるのは難しいんです。そこで、研究者とメーカーなどのユーザを接着剤のようにつなぐ役目を果たすのが、このJGN-Xというテストベッドだと僕は思っています。今はまだ、研究者が「こんなものができたよ」「ほら素晴らしいから使ってごらん」というレベルですが、これを世の中で本当に使われるものにしなければならないと考えています。


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