[テーマ]QoSを考慮した動的負荷分散の研究
小倉研究員 所属:幕張ギガビットリサーチセンター
氏名:小倉 孝夫
1.まえがき
 インターネットの急速な普及に伴い、ある特定経路にトラフィックが集中(輻輳)するというような問題が生じており、それを解決するためにネットワークの転送能力を最大限に引き出すことを目的としたトラフィックエンジニアリング(TE)技術が注目されている。
  トラフィックエンジニアリング技術はトラフィックの輻輳を空きの伝送路を利用して回避するため、ネットワークリソースを有効に利用できる。また、最近ではCDN(Content Delivery Network)によるストリーミングサービス、VoIP(Voice over IP)サービスが普及し始め、さまざまな通信品質(QoS:Quality of Service)の保証技術が重要になってきている。

 

2.研究概要

 さまざまなQoS保証等のエンドユーザ要求と、ネットワークリソースを有効に利用するネットワーク運用管理者の要求を満足させることを目的とし、JGNを用いたMPLS(Multi Protocol Label Switching)ネットワークを構築し、下記の評価実験を行った。

  • エンドユーザ間でQoSを実現するMPLS/DiffServのQoSクラス特性評価
  • ネットワークリソースの有効利用を行う動的負荷分散特性評価

その結果を反映して、QoS制御と動的負荷分散制御が共存するネットワーク制御方式の実現を目指している。
 具体的には、QoS保証型トラフィックはキュー制御等によりQoSが保証されるため、そのまま元の経路を維持するよう、また、ベストエフォート型トラフィックにおいてリアルタイム系アプリケーショントラフィック(VoIP、ストリーミング等)の遅延の影響を受けるトラフィックは、できるだけ元の経路を維持し、遅延に関係のないトラフィック(mail、P2P、web等)から優先的に迂回経路に移動する“優先度付IPフロー分散方式”を考案した。

 

3.ネットワーク構成

  幕張ギガビットリサーチセンター、高知通信トラヒックリサーチセンター、北九州ギガビットラボ、東京大学IMLの4拠点に優先度付IPフロー分散方式を実装したMPLSルータを設置し、MPLSネットワークを構築した。MPLSルータにはFast EthernetインタフェースとATM 155Mpbsインタフェースを実装しており、ATMインタフェースでJGNと接続し、 ATM CBR 120Mbpsのメッシュ構成で4拠点を結んでいる。(図1)


▲図1 JGN上での評価実験

 

4.これまでの成果

 JGNを用いた実験で既存アルゴリズムとの比較により優先度付IPフロー分散方式の有効性を明らかにした。また、ネットワーク制御によるトラフィックの安定性の観点で制御パラメータのチューニングは難しく、パラメータ値によりトラフィックは不安定な振舞いを行う。

 本方式に分散停止機能を導入することにより、最適なパラメータ値でなくてもネットワーク制御の安定性を十分、確保できることを明らかにした。また、実アプリケーション(HD-TV、Digital Videoストリーミング)により提案方式の検証を行った。(図2)


▲図2 デモンストレーション・システム構成

 

5.社会的効果

 JGN上で優先度付IPフロー分散方式の検証を行い、ほぼ実用段階まで進んできている。
  今後、デジタルシネマ等の高度アプリケーションの出現に伴い、ますます超高速かつ大規模ネットワークネットワークは必要になってくるものと予想され、ネットワークにおける伝送路のボトルネック解消及び不要な通信機器の増設防止に役立つものと考えている。

 

6.まとめ(総括)

 大規模な実ネットワークであるJGN上で優先度付IPフロー分散方式の検証を進めることができた。今後、さらに他の研究者(高度アプリケーション、ネットワーク監視等)と連携し研究を進めていきたい。

お問い合せホームページへのお問い合せ Copyright (C) 2004 TAO All Rights Reserved.